{霧の中の恋人}


久木さんは、その場に片膝をついて崩れた。


「望んでまてんって!
ハハハハハ!!」


お腹を抱えて笑いだした久木さん。


─────!!


「からかったのね!!」


「アハハハッ!
あまりにも君が深刻な顔をしているから、その緊張をほぐそうとしてやったんだろ?」


「あ、あんなことしたら余計に緊張するに決まってるでしょ!」


「フハハハ!それにしても君の顔、傑作だったな!
あー、可笑しい」


久木さんは立ち上がり、また窓辺まで戻った。


「もう!何なの一体!
心配して損しちゃった!!」



今日の久木さんは変だ。


急に体調を崩したり、素直になったり、優しくなったり。


かと思えば、からかったり。


いつもの無表情が嘘のように、表情を崩して笑ったり。


こんな久木さん、今までに見たことがない。


今なんて、楽しそうに笑みを浮かべて鼻歌まで口ずさんでいる。


陽気っていうか、無邪気っていうか…


やっぱり変だよね。

キャラが違い過ぎてない?


さっき、顔を近づけたとき感じた香り…



もしかして──…