{霧の中の恋人}


彼の腕で逃げ場を失った私は、出来るだけ身を縮めることしか出来ない。


「ど、どうするって!!」


久木さんの顔が至近距離まで近づいてくる。

ブラックホールに吸い込まれるように、彼の瞳に囚われて身動きが出来なくなる。


「ちょ、ちょっと久木さん…」


「ほら、目を閉じて。
こういう時は目を瞑るもんだろ?」


頬に、彼の吐息があたる。

彼の香りが鼻に掠める。


甘くて、ちょっとスパイシーな香り…。


香りで意識がボーっとする……。


目がだんだん閉じてくる……




いやいや!!

…ちょ、ちょっと!!




「そんなこと望んでまてん!!!」




…………




「クッ、ハハハハハ!!」