{霧の中の恋人}


「クッククク…
動揺しすぎ…」


久木さんは口元に手をあて、声を上げて笑いだした。


「だって…!!」


「心配するな。
そんなに警戒しなくても、君の好意を無碍にするようなことはしない」


笑いを収め、真面目な顔に戻した久木さんが言った。


「久木さん…」


が、彼は口元をつり上げ、何かを企むようなシニカルな笑みを浮かべた。


「…まあ、もっとも……」


久木さんは窓辺から離れ、私のほうへゆっくりと歩み寄る。


…なに?


私は逃げるように後ずさる。


でも狭い室内。

すぐに背中に壁の感触を感じた。



私のすぐ真正面まで来た久木さんは、私の真後ろの壁に両手をついて、私を囲うように閉じ込めた。


「ひ、久木さん…?」



「君がそれを望んでいるというのなら、その期待に応えなくもないが…。
どうする?」



ジリジリと久木さんの顔が近づいてくる。