{霧の中の恋人}


何か喉が渇いたかも…。


ホテルにはドリンクが入った冷蔵庫があるはずだよね。


部屋の中を見渡し、冷蔵庫らしきものをベッドの脇に発見した。


外から中が見えるように、透明になっている冷蔵庫。

お金を入れて、その場で買えるようになってるみたいだ。


ふーん、と関心しながら中を覗いてみる。


────………



「ギャッ!!!」



中に入っているものを目にし、思わず飛びのいて尻もちをついた。





「何してるんだ」


背後から聞こえた久木さんの声にも驚いて、肩がビクッと震えた。



「な、な、何でもないデス!!」


久木さんは怪訝そうに眉をひそめて、私の後ろを覗き見ようと首をかしげた。



「ギャー!見ないでください!
私は何も見てません!!」



”普通ではない冷蔵庫”の存在を、久木さんに知られるのが何故か恥ずかしくて、必死で後ろにあるものを隠した。



「何を隠した」


「何でもないですってば!」



私の肩を無理やり退けて、後ろにあるものを確認したあと、久木さんは「ああ…」とつまらなそうに納得した。



「こんな物にいちいち反応するな。
君も風呂に入ってこい。
さっぱりするぞ」



久木さんはタオルでわしわし髪の毛を拭きながら言った。


「じゃ、そうしますっ!!」


居た堪れない気持ちと、バスローブ姿の久木さんを直視できなくて、
私はその場からシュビっと立ち上がって敬礼し、不自然な動きで逃げるようにバスルームに向かった。




…心臓が…もたないかも…。