「…なんで、笑うんですか」
笑われていることに、ちょっとムッとなり、久木さんを睨みつけた。
「だって、傑作だろう?
見ず知らずの人間の気持ちを想像して泣くなんて。
それに、こんなものを見せる為にここまで足を運ぶなんて、本当に君はどうかしてる…」
笑いを含んだ震える声で、久木さんは言った。
どうかしてる…って言い過ぎじゃない?
久木さんの言葉に思うことはあるけれど、初めて楽しそうに笑う彼の顔を見たら、そんな事どうでもいいか…なんて気持ちになってしまう。
それにしても…
本当に、こんなに笑う顔は初めてみた…。
お腹を抱えて、心底可笑しそうに笑う彼の笑顔は、ちょっと幼くて、とても綺麗だった。
紫蘭の花畑の中で笑う彼の周りには、色鮮やかな蝶がヒラヒラと舞っている。
なんだか不思議な気持ち───
神秘的で、いつまでも見ていたくなる
大切な宝物を手に入れた気持ちになった。


