{霧の中の恋人}


園内の中央に、目的の建物があった。


全面ガラス張りで、それは大きなドーム型になっていた。



「久木さん、ここに入ってください」


前を行く久木さんに声をかける。



中に入ると、すぐに湿気を含んだモアっとした温かい空気に包まれた。



外の寒さから一転、温室の中は南国のように温かい。


ジャングルのような葉で覆われた温室の中に足を進める。



青々とした葉っぱ、濃いピンク色のブーゲンビレア、黄色いチランドシア…



南国特有の、色鮮やかな花々が咲き誇り、辺りにはヒラヒラと蝶が空中を舞っている。


まるで、別世界に来たみたい───…。



……………?


ふと、どこからともなく、水の落ちる音が聞こえたような気がした。


水の音に誘われるように、進路の矢印を無視して、葉っぱに覆われた脇道の中に入った。



「おい、どこへ行くんだ。
進路方向はこっちだぞ」


後ろから久木さんが着いてくる。


それでも私は、葉っぱを掻き分けるように狭い道を進んだ。



しばらく前に進むと、道が開け、光が射した。


隠されるように存在したその広場の入り口には、”泉の広場”と書かれた立て札が立っていた。