{霧の中の恋人}


頭を押さえて後ろを振り向く。


「大ちゃんごめんね!!」


「お前が遅刻なんて珍しいな。
まあ、何となく理由は分かるけどな…」


そう言いながら、大ちゃんの手が私の頭に伸びた。

乱れた私の髪の毛を撫でて整えながら大ちゃんが言う。


「今日の服可愛いな。髪もクルクルしてる…」


大ちゃんの手が、わたしの頭の後ろにまわり、クルクル巻かれた毛先にそっと指を通らせてから離れた。


「ありがとう。ちょっと頑張っちゃった」



ちょっと照れるけど、頑張ってオシャレした甲斐があったな。

そんな些細な努力を気付いてもらえるのってすごく嬉しい。



「おら行くぞ。誰かさんが遅刻したせいで一本電車に乗り遅れたんだからな」



クルリと背中を向けて、そっけなく言う大ちゃんだけど、私には分かる。

大ちゃんは今照れてるんだ。


自分で言ったことに自分で照れちゃうなんて可愛いな。


笑い出したいのを堪えていると、スッと手が伸びてきた。


「ほら、さっさと行くぞ!」


顔を真っ赤にさせた大ちゃんが私の手をとって歩きだす。


グイッと引っ張られて、大ちゃんの隣に並んだ。



大ちゃんと手を繋ぐのなんて何年ぶりだろう──


手を重ね合わせただけなのに、幼馴染という関係が確実に変わったことを実感した。



──そのうちすぐに実感するって
 アレコレしていくうちにさ───



ふと、泉が言っていた台詞を思い出した。


アレコレ…ってこういう事だよね…。


あれこれって事はこの先のこともあるわけで……




私の体温は一気に上昇した