{霧の中の恋人}



お母さんだ…。


手紙の端々にお母さんを感じた。

自分が何かあった時のために、こんな手紙を用意していたなんて…。

全然知らなかった。

どんな思いで、これを書いていたんだろう?


お母さんは何を思って……


お母さんの気持ちを想像すると、胸が軋んだ。

鼻がツンとして、喉が苦しくなる。


「…ハハ、お母さんってば自分に何かあったときに手紙を残すなんて。ほんと心配症なんだから…」


喉に何かがつまっている感じがして、上手く声が出ない。

声がどうしても震えてしまう。

笑顔が引きつってしまう。


顔を見られまいとして、私は椅子から立ち上がり、お母さんの仏壇の前に移動した。



「…泣くか笑うか、どちらかにしたらどうだ」


背後から久木さんが呆れたように言った。