何故だろう。
 どんなに嫌なことをされたって、この場所に行ってしまう。
 結局、この場所に戻ってきてしまう。
 ご飯が欲しいから?

 違う。

 もっと単純で複雑なこと。
 彼ら人間は私に名前を付けて、頭や喉を撫でてくれる。

 何だろう?

 この気持ち。

 ちっさいのは、尻尾を掴んだり、ヒゲを引っ張ったりしてくるけど、力いっぱい抱きしめてくれる。
 皺があるやつの膝の上は、とても心地よい。
 他も名前を呼んでたくさん撫でてくれる。
 思えば私が川のそばで震えていたあの日から、あの場所にいる人間は優しくしてくれた。
 名前を付けてくれたあの日に聞いた言葉。


“あなたもこれで私たちの家族だね”


 だからあの場所に行ってしまうのだろう。

 だからあの場所に戻ってきてしまうのだろう。



 そこは私の家で、そこには私の家族がいるから。