部屋を出ようとしたあたしは不意にアイツに呼び止められた。

「・・・?!」

「もし、まだ塾の時間に間に合うなら・・・」

「え・・・」

「俺、入院とかするのはじめてだし、ココでの生活のこととか・・・ちょっとお前に教えてもらいてぇんだけど・・・」

「・・・・・・」

「そうだな。南野は入院生活の先輩なんだし、北条も心細い思いをしてることだろうから、なんかアドバイスみたいなことでもしてあげたらどうだ?」

「せ、先生・・・」

「ダメ?・・・かな?」

「塾の時間は大丈夫だけど・・・」

「そっか。じゃあ、私たちはこれで失礼するから、南野は北条に自分の経験なんかを話して聞かせてやるといい」

「あ・・・はい・・・」

「じゃあ、北条、また来るからな」

「先生、ありがとうございました」

先生たちは病室を出ていってしまった。

だから、あたしとアイツはふたりきりに・・・。