「なにかもっと気づかいのあることが言えないのっ!?」

「しかしなっ・・・」

「おふたりとも、気が動転なさっているのは分かりますが、お子さんの前ですよ」

夫婦ゲンカ寸前のふたりを、さっきの先生らしき男のヒトの声が止めてくれた。


“そのヒトの言うとおりだよ。恥ずかしいから病室で言い争ったりしないでよね”


「あたし、ほとんど大丈夫・・・手になんか刺さってるみたいな感じがするけど・・・」

「いま腕に点滴をうってるところだからね」

「“手”より“足”のほうは痛くないのっ?」

「足・・・? 足がどうかしたの・・・?」

「千賀子ちゃんは“大腿骨骨幹部”を骨折したんだ。痛みがないのは、まだ局部麻酔が効いてるからだよ」

そーいえば右足が包帯でグルグル巻きにされた状態で、鉄の棒にひっかけた紐で吊り下げられている。

おまけに締め付けられている感じもある。きっとギプスで固定されてるんだと思う。

「大腿骨って太モモの骨のことだよね?」

「そのとおりだよ」