ゆっくりと時間をかけてだけど、だんだん少しずつ、自分の置かれている状況が分析できるようになってきた。


“あたし・・・いま病院にいるんだ・・・!!!”


ほどなく、さっきと同じ女のヒトの声が聞こえてきた。見るとベッドの傍らに看護師さんがいるのが確認できた。

「ご家族の方、中へどうぞ」

ペタペタとスリッパを鳴らして何人かのヒトが部屋に入ってきたのが分かる。

「千賀子ちゃん。お父さんとお母さんが来てくれたよ」

中年男の声が聞こえる。先生だと思う。

「千賀子、あたしよ、母さんよっ」

泣きそうな顔の母が視界に入った。

「か、母さん・・・」

「意識がなかなか戻らないから、母さんたち、すごく心配したのよっ」

「気分はどうなんだ?」

“父さんの声だ”

「あなた、気分がいいわけないでしょっ」

「べ、別に気分がいいとは思っとらんさ」