鏡の前でヘアコロンをスプレーしていると、扉をノックする音がした。 足音とノックの仕方で、それが麗なのだとすぐに分かる。 「麗!」 嬉しさに勢いよく扉を開けると、見慣れない私服姿の麗がそこに居た。 「…遅くなりました」 燕尾服に隠れている蒼いリングが、今は胸元で堂々としている。 濡れた髪が、酷く艶めかしい。 どく、と胸に深く沈むような熱を感じて、気付けばその髪に触れていた。