「私はご主人様の執事ではありませんから。…お嬢様にとって、いちばん良いと思われる方法を選択しました」

さらっと麗はそう言い捨て、足元で鳴くステラをあたしの腕へと抱き上げる。


「そんな…、お父様は野良猫が大嫌いなひとなのに!」

人一倍、血筋や経歴を気にするひとだから。



「私も、お嬢様に捨てられれば野良猫と一緒ですから。そんな存在をたいせつになさるお嬢様を、私がお護りしたいのです」


そう言われると、もう何も返せない。

お父様も、執事も。

すべてがどうでもいいことのように思えてしまう。


まっすぐあたしを捉える麗の瞳に、堪えようと決めたばかりの思いが、また音を立てて大きくなった。