彼女を見送ったあと、
俺はコーヒーを片手に
しばらくその場にぼんやりと立っていた。



その夜のことはどこか絵空事で、
俺は忘れられない人を心に浮かべていた。


そんな風に扱った彼女なのに、その彼女の
肌のぬくもりを思い出していると、

俺の中には
なんとも言えない感情が湧きあがっていた。



それはとてももどかしい想い。



自分ではまだ認めたくない想い。





だから
「人肌恋しい」と言った彼女を

抱いてやったんだと、
どこかでそう考えるようにしていた。



中途半端なのは俺自身だったこと、
そして俺の方が彼女に救われていることに
気づいていなかった。


『一度抱いた』=『自分のオンナ』

と、俺はどこかでそう意識し始めていた。