バクバクバク…-――






もうドキドキを軽く通り越して、どっかの民族音楽みたいに鳴りまくってるあたしの心臓。





どうかしたら、はずみで口から出てしまいそうだ。






……早く……ど…どいて、欲しい……






目の前で規則的に動いてる耀太の胸板を、念力よろしく凝視してみる。



だけど、3秒と持たなかった。





学校ではがっちりネクタイが締まっていたのに、今ではボタン2つはだけたそこは、綺麗な鎖骨が見えてて、男性経験に乏しいあたしが凝視するには、どうにもこうにもなまめかしい。





………う゛うう…
まじで息苦しくなってきた……






普通にするともろにかかりそうで、自分の吐き出す息にさえ神経を尖らせてしまってるあたし。





息苦しくなるのは当然で、いつまでも動く気配のない耀太に、なんとかこの状況から解放してくれないかと懇願するため、あたしはさっきから震えっ放しの唇に、神経を集中させた。






「……よ…うた…?」






やっとそこから紡ぎ出せた言葉は、たったの3文字だけど、きっとこれで自分の気持ちは伝わったとあたしは確信した。






だって、前を覆っていた耀太の体が、声に反応するように、わずかにピクリと動いたから。






なのに、耀太から返ってきた言葉は、さらにあたしを混乱させるものだった……







「……この 匂い…」







…………は…い…???







`