「誰かいい男居ないかなぁ…?」






帰りに寄ったカフェで、アイスティーの氷をストローでくるくる回す瑞穂が、ため息混じりに呟いた。







「ホントだねぇ…」







さっきまで思い出に浸っていたあたしも、つられて大きなため息を漏らした。






時に優しく、時にあたしを叱ってくれるような“いい男”は居ないかなぁ……?






優し過ぎる男も、常にツンツンしてる男も、あたしにとっては“いい男”じゃない。






今流行りのツンデレってやつに憧れる。







−−−-……




あれはクリスマス前だっただろうか。
寒さが本格的になり始めた頃、放課後の静かな教室に佇む2人の人影を見つけた。
1人はどう見ても自分の彼氏で、もう1人は隣のクラスの女の子だった。



そしてそれは明らかに告白シーン。
あたしは思わず盗み聞きをしてしまった。



優し過ぎる笠井君は、あたしに目撃されてるとも知らず、コクってきた子に『ありがとう』とだけ伝えた。



………はっ??
コクられたのは百歩譲るとして、『彼女居るから、ごめん』はないの?




相手の子も、そこで口をつぐんだ笠井君を戸惑いの目で見ていた。




きっと、コクる気はなかったけど雰囲気に呑まれちゃったぁ!って感じだったんだと思う。




『ええっとぉ、まだ藤村さんと付き合ってるんだよねぇ?』




コクられた相手に、ここまで気を遣わせる男、笠井 和幸。




『ああ、うん。実はそうなんだ』




『実は』って何!?
そんなの学校中が知ってる話なのに!!




笠井君の態度は、いかにも自分から決定的なことを言うのは心苦しいって感じで。




何て言うか、すごくがっかりした。







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