あたしが駆け足で戻った部屋には、すでに耀太の姿もあった。
「楓も戻ったな。よぉし、んじゃあ、始めますか!」
全員揃ったこともあり、淳弥と瑞穂と園子ははなにやらゲームを始める様で、いそいそと小さな紙を配り始めている。
そんな中、耀太は相変わらず隅の方に居て、
「先生、なにしてたんですか?隣が空いてて寂しかったんですから……」
その傍らには、相変わらず理恵を従えていた。
ムムムッ---
はたから見てると、まるでトイレから帰ってきた客を迎え入れるホステスのような理恵。
耀太は耀太で、ちょっとね…なんて曖昧に笑ってるし。
よっぽど後ろから耀太の頭を小突いてやろうかと思ったけれど、その左手にケータイを握りしめているのに気づいて、あたしは足を止めた。
………さっきの気にして、車から取って来てくれたんだ……
そんなささいなことで、じんわり温かさを感じてしまう今日この頃。
いくら正式に付き合い始めたといっても、耀太はそうそう暇ができなくて。
おかげであたしもバイト三昧の日々で。
ほとんど会えないから、こうして耀太の優しさを直に感じるのが、久しぶりだったりするんだよね。
だから、ここは耀太のためにも、生徒のフリをし続けてやろうと、あたしが心を入れ替えた矢先、
「あっ!!ケータイ!!」
理恵が嬉しそうに顔をほころばせながら、耀太の膝を乗り越えてケータイに飛びつく姿を目撃してしまった。
な、な、なにをぉぉぉ!!??
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