そのまま部屋に戻ろうかとも思ったけれど、このむしゃくしゃした気持ちのままじゃ、当分カラオケなんて楽しめそうもなくて。
かといって、またトイレに引き篭もるのもなんだかバツが悪い気がして。
廊下をフラフラ歩いていると、“故障中”と書かれた空き部屋を見つけた。
当然中に人は居ない。しかも鍵もかかってない。
………ちょっくらここで頭冷やして戻るか…
空き巣のように中へとこっそり侵入するやいなや、あたしはドサッと3人掛けのソファーに寝ころび、目を閉じてみた。
隣の部屋から若干音程の外れた歌が聞こえてくるものの、なかなか居心地がいい。
しばらくそうしていると、最近の寝不足がたたったのか、あたしはうつらうつらと舟を漕ぎ始めていた………
〜〜♪〜♪〜〜♪
こんな時にかぎって、あの瑞穂から連絡が来るもので。
「……ふぁい…」
『ちょっとアンタ達!いつまでいちゃこらしてる気よ!!
みんな2人が消えたことに気づき始めてるわよ!!』
小声ながらにドスの聞いた声は、なかなかもっていい目覚ましになる。
ソファーから飛び起きたあたしは、頭をフル回転させて、先ほどの状況を説明した。
「へっ!?耀太は先に部屋に戻ってるでしょう?だってさっきケンカしちゃったし……」
『はあ?ケンカ?
なにやってんのよ、せっかく相談できる場を作ってやったのに……』
「相談?何の?」
『あのねぇ……、アンタ、みんなに本当は言いたいんでしょ?
“あたし達付き合ってま〜す”って……』
「!!??」
なぜにそれをっ!?
ぎょっとなるあたしに気づいたのか知らないけれど、
『驚くのはいいから、とりあえずアンタだけでも1分以内に戻って来なさい!!』
一方的に怒鳴った瑞穂は、そこであっさり電話を切った。
瑞穂……恐るべし……
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