「……あっぶね」





そんな声が聞こえて、恐る恐る目を開けると……-――




両手を最大限に伸ばし、必死の形相でドアを寸止めしてる耀太の姿が。





っていうか!





「あ、あ、あ゙っ〜〜!!
なんで買ってきたヤツ全部落としてんのよーー!
マグカップ割れちゃったんじゃないの〜!」





耀太が持っていたはずの紙袋が、無惨にも足元に転がっているのを見つけて、さっき買ったばかりのマグカップのことが即座に頭を過ぎる。





「大丈夫だって。
草の上だし……ほらっ」





沢山ある中から、雑貨屋さんの紙袋を取り上げ、こちらに中を見せる耀太。





たしかに変わった所はないみたいだけど……






カチャカチャと嫌な音のしない紙袋にほっとしながらも、2人同時に気に入って買ったお揃いのマグカップより、車を優先させた耀太に異様にムカついてしまう。





「どうせ、親のすねかじって買ってもらった車のくせに……」




この禁句だけは言ってはいけない、とは思いつつ、気づけばあたしはぼそりと声に出してしまっていた。






社会人にとって『親のすねかじり』と言われるのが、なによりムカつく言葉だと知っていて。






「………今、なんつった…」





ほら。




耀太も。






「親のすねかじり、とかなんとか聞こえたのは、俺の気のせい、だよな……?」





全ての紙袋を拾うその背中から、わずかに怒りのオーラを醸し出している。






ああ、ヤバい………
このままじゃ、ケンカに発展しそうな雰囲気……





そう思うならあたしもここで引けばいいのに、ついつい、







「確かに言いましたけど、それが何か?」





言っちゃうんだよねぇ……





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