耀太はなんとかあたしが買ってきたゼリーを喉に流し込むと、コクンと可愛らしい音を立てて薬を飲みほした。
その様子に、ここでもあたしの胸はキュン、みたいな。
「いつ……来た……?」
再びベッドへ横になった耀太が、不思議そうにあたしを見上げている。
いつもとは逆な状況に、またもやキュン。
………ホンット、あたしってばどうしようもない。
「ううんとぉ、30分くらい前かな……」
自己嫌悪に陥りつつ、なんとか微笑みを浮かべて耀太を見つめると、優しい、慈しむような微笑みを返されて、不覚にも、またキュンをやってしまった。
「そっかぁ…、悪いな、様子見にきてくれたんだろ?」
「まあね…、学校で具合悪そうだったし。
あたしのことは気にしないで、もう一回寝ていいよ。
薬飲んだから、きっと熱も下がるよ……」
「そうだな、そうするよ……
帰る時は鍵かけなくていいから」
こういう時に限ってそういうこと言うんだから………
「まだ帰らないって。
耀太の熱が下がるまで、ここに居るからさ」
「……伝染るぞ」
「いいよ、別に。
もう受験生じゃないし。
あたしにバンバン伝染して、耀太がめきめき良くなってくれたら、それでいいから………」
本当に、できるならそうして欲しいと思う。
きっと園子達センター試験組は、耀太の復活を待っていると思うから。
「耀太は、皆の耀太だから………ね?」
「………」
一瞬、耀太は眩しそうにあたしを見つめると、なにかを噛みしめるように、ゆっくりとその瞼を閉じていった。
そしてひと言−−−
「俺は……そんな楓が、好きだよ……」
呟いて、またスーっと、眠りの世界に入っていく。
………す、す、す、好きっ!?!
大パニックに陥ったあたしを残して。
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