「………」



「俺と付き合って欲しい……」





ああ、ついにこの瞬間がきてしまった……






固まるあたしに、ヒロキは淡々と、だけどどこか切なげな声で、





「ダメ、か………?」





あたしに真っすぐ視線を合わせて呟く。






どうしよう……


どうしよう……


どうしよう……





心は決まっているけれど、断る上手いセリフが見つからない。




“ダメ”じゃあんまりだし、“付き合いたくない”はストレート過ぎる。





素直にここは“好きな人が居る”と、理由を言うべきなんだろうか?





んん〜……
……よし、言おう……!





ふいに指に触れたブレスを包み込むように握って、あたしが意を決して顔を上げた、その時−−−






「……石橋が、好きなのか?」





………!?!






思わぬ先手を打たれ、“あのね”と言いかけてた自分の口が、そのままあんぐりとだらしなく開く。





「違う?」






……うぐぐ…っ……





見定めるように顔を覗き込んでくるヒロキに、しきりに目を泳がせた後、あたしはうなだれながらゆっくり大きく頷いた。





「あ〜あ…やっぱりな…
体育館で楓が叫んだ時から薄々感じてはいたけど……
そっかぁ、石橋か……
俺に勝ち目なし、だな……」



「……ごめんなさい」






結局その後、耀太が幼馴染みであること、卒業式にコクるつもりでいること、ついでにそこが住んでるアパートであることを告げると、





「うわっ!?最悪!!
結局、俺の行動全てに石橋の呪いが掛かってたんだな……」






と、ひと際大きく顔をしかめられた。






ははっ……呪いって………






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