館内は、さすが表に“X'masイベント開催中”と掲げられてただけあって、至る所にクリスマスの飾りがしてあり、以前とは全く印象が違って見えた。





しかも家族連れよりもカップルの割合が多く、なんだか全体がピンクな雰囲気。






微妙な距離をあけて前を歩くヒロキも、その雰囲気にすっかり圧倒されてしまったのか、しきりに右に左に首を動かし、





「……一応、下調べはしてたんだけど……
なんかすげぇな……」





と、さっきから何度も「すげぇ」を連発している。






その後ろから、周りをよくよく観察しながら歩いていたあたしは、あることに気づいて、顔がひくついた。





水槽の中がよく見えるようにと少し薄暗い館内は、普段は恥ずかしがり屋のカップルにもうってつけのようで、密着率がハンパない。





どこもかしこも、恋人繋ぎ、恋人繋ぎ、腕組み…のラブラブオンパレード。





してないあたし達の方が、逆に目立つんじゃないかってぐらいに。





どうしよ……
めちゃくちゃ居心地悪いんですけど……






次第に、優雅に泳ぐ魚を見る余裕もなくなり、あたしは俯いて前を歩くヒロキの足元ばかりを見つめて歩くようになっていた。





「……気分悪いのか…?」





そんなあたしに気づいたヒロキが、一度立ち止まり、心配そうに至近距離で顔を覗き込んでくる。






いや、そういうのがダメなわけで……





なんて素直に言えるはずもなく。





フルフル首を振って否定すると、何を思ったのか、ヒロキはあたしの左手を手にとりぎゅっと握った。





「そんなに下ばっかり見てたら、はぐれるぞ……」






だから……そういうのがダメなんだってば……





なんてやっぱりあたしが言えるはずもなく、ノーマルに繋がれた手にチラチラ視線を向けながらも、結局解くことも出来ず、そのまま館内を回ることになってしまった。






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