あれから約1時間後−−






キッチンでは母親がベタなクリスマスソングを口ずさみつつ、とっくに出来上がってるはずの特製ビーフシチューを、今だにかき混ぜている。




「そこに置くのかナイトを。
う〜ん…まいったなぁ……」





かたや手持ち無沙汰となった父と娘は、各々正装?姿でチェス盤を挟んでにらめっこ中。






っていうか、パーティーはいつ始めんだ?って話で。






「まだなの〜?
お腹減ったんですけどぉ」



「もうちょっと待ってて。
主役のチキンがデリバリーされる手筈になってるから」






「……!?チェックメイトぉ!!」





そんなデリバリーサービスあったっけ?なんてあたしが首をかしげてるうちに、いつの間にか父親がチェックメイトコールをしていた。





「げっ!?また今年も負けた」



「ふふ〜ん、楓にはまだまだ負けるわけにはいかないよ」



「あっそう……まあ別にいいけど……」




実はこのチェス対決も毎年恒例だったりする。





3年前までは、石橋家も入り乱れての大熱戦だったんだけど。





今じゃ……




シーン……-―
(父娘の間に流れる気まずい沈黙?)





なんとも呆気ないチェス大会となってしまった。





「耀太は今年も不参加なのかい?」



「さぁ、どうかしら……
早く仕事が片付いたら行きますってメールは来てたけど……
この分じゃ、欠席かしらね……」





張り合いのある飲み相手でもあり、チェス相手でもある耀太の欠席予想を聞いて、あからさまに肩をガックリ落とした父。





そんなぁ……
せっかくお小遣前借りしてプレゼント用意したのに〜






その真向かいに座る娘も、内心予想はしていたものの、それを聞いてこっそり意気消沈してしまった。






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