「楓の気持ち知ってるあたしが言うのもなんだけど……
行ってきたら?」



「えっ!?それマジで言ってんの」



「かなりマジ。
逆に考えてみなよ。
楓はようちゃんへの気持ちにケリをつけるためにコクるんでしょう?
ヒロキも……おんなじなんじゃないのかな?
それはフラれるつもりってわけじゃなくてさ……」






瑞穂の言いたいことはなんとなくわかる。






だけど……





だけどね……






「もし本当にそうなった場合、あたしとヒロキの間には気まずさしか残んないじゃん……
そんなのヤだよ……」





こんなことでヒロキとの関係を失いたくないよ……






「楓の気持ちも痛いほどわかるけど、ちゃんと気持ちを受け止めてあげるのも優しさじゃないの?
それが例えいい結果じゃなくてもね」






“気持ちを受け止める”






そう言われると、そうかもしれない。






耀太にコクる決心をした今だから、それがすごく大切なことだと感じられた。




もしもコクることさえ耀太に拒否られたら……?
それだってすごく辛い。






「わかった……
予定通り行ってくる。
違う場合もあるしね……」



「そうそう。
あたしも高校生活最後のオーディション頑張るからさ」






ずいぶん前から、クリスマスにある大手レコード会社の地方オーディションに望みを賭けていた瑞穂は、あたしの顔に握りこぶしを突き出してニカッと笑った。





あたしはというと、頑張る意味が多少違う気もしたけど、そんな瑞穂にそれはそれで受け止める勇気をもらえた気もした……かな?







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