はっとなった。





瑞穂と香住君には、予備校という繋がりしかないんだってことが、すっかり自分の頭から抜け落ちていた気がした。





「………ごめん。言いすぎた……」



「いいよ、別に。
あたしも自分のことしか考えてなかったし。
楓はようちゃんが好きなんだもんね。
やっぱ、他の男の車に乗るなんてヤだよね。
あたしこそ、ごめん、調子にのっちゃって。
帰りの負担がなければ楓も付き合ってくれるかなって思ってたけど、逆だったね……」



「ううん。瑞穂の気持ち、あたしにも痛いほどわかるからさ……
確かに送ってもらうのは楽だし。
だから明日からも、ここに来ようね」





好きな人に会いたくてもなかなか会えない辛さ、あたしにもわかるから……





「ありがと、楓〜〜」





抱き着いてきた瑞穂の頭を、よしよしと撫でてあげながら、あたしは自分にも、“あと2週間したら、この状態も終わりだから…”と言い聞かせていた。





まさか瑞穂がクスンと鼻を鳴らしつつも、ぺろりと舌を出してほくそ笑んでたなんて全然思わずに。





「ほら、戻ろ?
香住君と話すチャンスが減っちゃうよ?」



「ホントだ!早く行こう、楓」






嬉しそうにパタパタ走って行く瑞穂を見ながら、あたしはその背中に向かって“頑張れ”と心の中でこっそりエールを送った。







`