最近、あたしと瑞穂は授業がなくても予備校に通うようになった。





それは、必ず何かの先生が自習室に常駐していて、質問しやすいからであって……





「キャッ、香住君と目が合っちゃった♪」





決して色恋のためではないはずなんだけど。





「ここ、サイコ〜」





さっきから小声でニタニタ笑っている隣の瑞穂は、よこしまな心満々らしい。






そんな瑞穂を、あたしは無言で休憩スペースに連行した。





「アンタなにしに来てんの!?」



「ん?香住君観察」



「はぁ!?アンタのおかげで、あたしは毎日気の毒な思いしながら、ヒロキに送ってもらってるんですけど?」





ここに来てることはヒロキには秘密にしとこうと思うのに、学校で瑞穂が告げ口しちゃうから、“今日は何時?”ってメールが必ずといっていいほどヒロキからくる。





そうなるとあたしもアホだから、素直に帰る時間教えちゃったりして。





結局、毎日あたしはヒロキに家まで送ってもらってる状態で。






多分、あたしがメールを返さなくても、瑞穂が帰る時間まで教えちゃうんだろうけど。





ブルブルブル…-―





ほら、今日も来ちゃった。





[昨日と同じ時間でいい?]






渋々、[はい]と返信メールをしてるあたしの横で、瑞穂は素知らぬ顔でイチゴジュースをチュルチュル飲んでいる。




これにはカチンときた。





「瑞穂のおしゃべり!
あれほど黙っててって言ったのに、またヒロキに予備校のことチクったでしょ!
もう明日から、自習になんて付き合ってやんないからね」





あたしが横目で睨みつけてそう怒鳴ると、瑞穂は途端にしょんぼりとなった。






「楓はいいよね、ようちゃんに毎日学校で会えて。
あたしはさ、ここに来ないかぎり、香住君に会うことも出来ないんだもん……」






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