どうしてそこまで言うのか、ホントにわからなかった。





ただ、ヒロキの声が必死そうだったのは、なんとなく伝わった。





「どうして?どうしてここまでしてくれるの?」



「………それは…」





ヒロキが言い淀んでいるうちに、信号は青に変わっていた。





はっとしたヒロキは、車を徐々に加速させながら、小さくため息を漏らしている。
そしてしばらくしてから、やっと口を開いた。





「俺だけ楽してるみたいでさ、なんかヤじゃん?
だから、せめて足になってやろうと思ってさ……」



「でも受験するのはあたしだけじゃないんだよ?
淳弥だって園子だって、試験があるんだよ?」



「アイツらはいいの。
勝手に2人で盛り上がってるみたいだしよ。
でも楓は、こんな夜道を毎日一人で帰ってるんだろ?
なんかほっとけねぇよ……」





これを聞いて、さすがヒロキだと思ってしまった。
どこまで面倒見のいい男なんだって。





だけど、あたしだけ甘えるのはやっぱりずるいと思うんだよね。






「……でも…」



「俺はしたくてしてんの。
だから…、黙って頷いといてくんない?
石橋には絶対負けたくないんだ」





ここでどうして耀太の名前が出てくるのか不思議だったけど、きっと“運転技術”のことを言ってるんだと思った。





だからあたしが、





「ヒロキの方が、担任より運転上手いと思うよ」





と褒めると、一瞬キョトンとなったヒロキは、苦笑いを浮かべながら「サンキュ」とだけ小さく呟いた。





「じゃあ、お言葉に甘えて、明日から瑞穂ともどもよろしくお願いします。
だけど、今度からは待ち合わせはタバコ屋でいいからね」





今日みたいな思いをするのは、もうこりごりなんだもん。






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