ヒロキの車は大きすぎて、元から一発で通るのは無理な話だったんだけれど。





それでも、一回切り返しただけで魔の曲がり角を通過したヒロキを、あたしは尊敬せずにはいられなかった。





「マジでスゴイじゃん!!
レジのお姉さんもウットリしてたよね。
ヒロキ、やるぅ〜〜」



「うっせ、その話はもういいよ。
あとは寄りたい場所はないのか?」



「もう、ないない。
しかも今のだってなんだか“たかった”みたいになっちゃって悪かったね。
これゴチでした!」





あたしが謎のハイテンションで、ヒロキに買って貰ったミルクティーを振ってみせると、ことさら照れたように口を尖らせた。





「バイトしてんだから、それぐらい当たり前だろ。
そんなもんで喜ぶんなら、明日もなんか買ってやるよ」



「……えっ……明日…」






そっか……
毎日送るって言ってくれてたっけ……
楽しいのは楽しいんだけど、やっぱり、それってどうなの?って思っちゃうよ。






急に口をつぐんだあたしに気がついたのか、信号で止まったと同時にこちらを振り向くヒロキ。





「どうした……?」





少し戸惑ったような、不安そうな表情が、前の車のテールランプに照らされて見えた気がした。





「やっぱり、悪いよ、毎日なんて……
瑞穂も居るしさ、今日だけで十分…」



「ちょっと待て。
悪いとか言うなよ。
俺が勝手にやってるんだし。
瑞穂も俺が送るからさ、明日も俺に楓を送らせてくれ」






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