ちょっと聞きたいことがあるからと、あたしが作ったお弁当を取りに来た耀太を捕まえて、さっさと部屋へと連行した。





最近はお弁当宅配が禁止されてるから、こうするしか2人っきりになる方法がなかったんだ。





耀太は勉強の質問だと思ったようで、机に置きっぱなしの英語のテキストを覗いている。





「わかんない場所ってどこ?」



「いや、勉強のことじゃなくて……」



「………ん?」






毎日残業続きで疲れてるんだろう。
首をかしげて、耀太はそのままあたしの椅子に腰掛けた。





「えぇっと…、ヒロキのことなんだけど……」






もちろんあたしは、昨日のことを目撃された話や、今日言われたとんでもない話をする気は、毛頭なかった。
忙しい耀太に、余計な心配はかけたくないから。





ただ、それを隠したいがために、全ての話のきっかけまでなくしてしまったのは失敗だった。





どう切り出せばいいのかわからなくて俯いているあたしを、下から覗き込むようにして、耀太が問い掛けてくる。






「桐島と、なんかあったのか?」



「べ、別に、なんにもないよ」





なんだかとても後ろめたい。





耀太をまっすぐ見つめることができなくて、ついつい視線を宙に泳がせてしまう。





そんなあたしを、少し寂しそうな表情で耀太が見ていたなんて、あたしはまったく気づくわけもなく。





「ヒロキって、予備校とか塾とか行ってないみたいだし、試験はないのかなぁって……
ほら、あたしとヒロキって補講仲間だったしさ。
なんていうの、運命共同体的な感覚があるし……」





あきらかに苦しい言い訳を、早口で並べていた。






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