若干緊張した面持ちのヒロキの視線が痛い。
けど、ここであたしが怯んでいたら、信じてもらえない可能性だってある。





ひと呼吸置いて、あたしは真剣な表情を作り直した。




「偶然にも親同士が知り合いでね、昨日も親がそのよしみで、お酒飲んだのに急に雨になったっていう理由で、無理矢理先生にあたしの迎えを頼んだんだよ……
ウチの親ってかなり強引な所があるから。
だから先生は、受験生なのに風邪引かせるわけにはいかないからって、仕方なくあたしを迎えに来てくれた。
あたしと先生は、その程度の関係。
みんなにヘンな誤解されるのがイヤで、お互い知らないフリをしてたんだ。
だからヒロキも、このことは黙っててくれないかな?」




これでヒロキが納得してくれれば……





緊張で唇がわずかに震えてしまう。





それでもあたしがヒロキの瞳をじっと見つめていると、少し目を伏せてみせたヒロキは、数秒後、またあたしと目を合わせた。




「マジか?」


「うん、マジ」




100%とは言わないけれど、大体は合ってるんだから。




「じゃあさ、迎えとか、昨日だけなのか?」


「うん。昨日だけ」




これは自信持って言えちゃうもんね。




「もしまた急に雨が降るような日があったら……?」




そんなとこ、考えもしなかったけど………



昨日みたいな楽しいドライブなら、多少の危険は冒してでもまたできたら……
なんて思っちゃいけないことは、よくわかってるつもり。



実際こうして、目撃者が現れたんだから。




「うんとぉ、親に頼む、かな……
お酒を飲んでなければ、の話だけど……」





少しだけ緊張が解れて、ヘラヘラ笑い出したあたしを見て、再び視線を外したヒロキは、下唇を噛んで何かを考えているような表情をした。





やがて−−−






「わかった……
お前達は隠れて付き合ってるわけじゃないんだな……
悪い。勝手に誤解して」





と、申し訳なさそうにその表情を緩めた。





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