それからしばらく2人で、いかに倉田さんと耀太が“研究バカ”だったのかを想像しては笑い、気づけばあと5分で昼休みが終わりという時間になっていた。
「そろそろ行きますね」
そう言って立ち上がったあたしを、千夏さんが呼び止める。
「楓ちゃんには、何か変わったことはないのかしら?」
毎回帰り際になると、千夏さんは必ずと言っていい程、あたしにこう尋ねてくる。
きっと、耀太へ恋してるあたしを応援してるのに、想いが叶わないからとあたしが違う方へ気が向いてしまうんじゃないか心配してるんだと思う。
だからあたしも、余計な心配は掛けないように、正直に答えるようにしてる。
「強いて言えば、1つだけ……」
「また………告白?」
恐る恐るといった表情で尋ねる千夏さんに、まっさかぁと笑って答えた。
「世の中そんなに物好きばっかりじゃありませんよ。
あの2人以外、誰にもコクられてませんって。
ただ、予備校で同じ授業を受けてる人に、クリスマスの予定を聞かれただけです」
2人というのは、あのイガグリ楠君と、実は体育祭の翌々日に突然コクってきた全然知らない2年生のこと。
『走る姿に一目惚れしました』
なんて言ってたけど、多分人違いじゃないかと、あたしは思ってる。
だってあたしが走ったのって、障害物競争だよ?
どこぞのプロ野球チームのハッピ着せられて、オデコにバッド当てて下向いてグルグルグルみたいな。
当たり前にゴールまでは千鳥足で。
しかも途中で派手に転んじゃったし。
平行感覚ゼロで走る女の何処にお前は惚れたんだ?って聞きたかったけど、そこは言わずに『ゴメンね』とだけ伝えた。
早く間違いに気づけよ、憐れな少年。
そう切に願いながら……
`

