千夏さんはあたしの意見を聞いて怒るどころか、目を真ん丸にして驚いた。






「すごい!どうしてわかるの?
実は種をから煎りするの、すっかり忘れてたのよ。
さすが楓ちゃんねぇ…」





せっかく自分が作ったお菓子に、いけしゃあしゃあと辛口コメントを唱えた生徒を、羨望の眼差しで見つめる保健室の先生。




あれからすっかり仲良くなったあたし達は、お互いを『千夏さん』『楓ちゃん』と呼び合う仲になり、たまにこうして昼休みに千夏さんの作ったお菓子を、あたしが試食するようになった。





つまり、あたしは千夏さんのお菓子作りの“先生”になったってわけで。





その代わりと言ってはなんだけど、あたしはある人物の情報を千夏さんから教えて貰ってたりする。





これぞまさしく、“持ちつ持たれつの関係”ってやつだな、うん。







あ、そうそう、あの例のお食事会のことなんだけど――





『……お食事会?
だったら、楓が無事に短大に合格した後にしねぇか?
じゃないと、その間も気が気じゃなくなりそうでさ……
楓も嫌だろ?
メシ食いながら、俺と祥司から化学反応式とかの説明されんの』





なんて耀太が冗談とも本気とも取れる顔付きで言うから、結局年末までお預けになった。





確かに、そういう状況にならなくもない気がしてね。





なにせ男が2人して、“研究バカ”なんだから……






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