「どうしましたか?」




真っ白を基調とした保健室の中(当たり前だけど)、白雪姫を思わせるような若宮先生が、可憐な笑顔を惜しみなくあたしに向けている。




なんていうか、もしこの人が本物のライバルだったとしたら………




あたしは間違いなく、惨敗だ。





そんなことを痛感しつつ、違うことにホッとしたりして。




青くなったり赤くなったりしてるあたしを、しばらく不思議そうに眺めていた先生だけど。
あることに気付いたのか、パッとその小さな顔をほころばせた。





「もしかして、アナタ……楓さん?」



「えっ……!?はあ、まあ………」



「嬉しい!一度アナタとは話してみたかったの。
どうぞよかったらここに座って?」




いきなり下の名前で呼ばれて戸惑うあたしに躊躇することなく、生徒用の丸椅子ではなく自分と同じフカフカのクッションを敷いたキャスター付きの椅子を勧める先生。




その一連の可愛らしい動作に、一瞬自分が童話の中の“七人の小人の家”に招かれた客のような気分になってしまった。




………って、
いやいや、あたし一応体調を崩した生徒なんですけど!?




「あら、ごめんなさい。先にあれを書かなきゃいけなかったんだわ。
あたしったらもう………」




先生もそのことに気付いたのか、赤い顔で慌てて利用者名簿を探している。





あたしはそんな先生の様子をぼんやり見ながら、もしライバルだったとしても、この先生は憎めそうもないな、と思った。




雰囲気があまりにもほんわかしてて、こっちが熱くなればなるほどバカをみる、みたいな。




でもよく考えたら、倉田さんに対しては先生の方が熱くなってるんだよね。
人間、恋愛に関しちゃ意外性ばっかりなのかもしれない。




そんなことを考えていたら、やっと見つけた利用者名簿を開いた先生が、クリクリの瞳をあたしの方へ向けているのに気づいた。







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