そこで一瞬間を置いた耀太は、その時の感情が甦ってきたのか、眉間に強烈なシワを寄せて言葉を吐き出した。
「玄関で、爆睡してやがった……」
「へっ!?玄関?爆睡?」
「時期的にそうじゃねぇかなぁ、とは思ってたけど、6月に学会があんだよ。
その準備で研究室内はこの時期てんやわんやなんだ。
俺もよく手伝わされてたなぁ
3年でゼミが決まるから、専門知識ゼロで役に立たない3回生はただの使いっぱしりでさ…」
「ストーップ!
脱線王子、自分の思い出話はまた今度ということで」
「あっ、わりぃわりぃ」
ったく、気を抜くとすぐコレなんだから。
苦笑している耀太をひと睨みし、あごをしゃくって続きを促すあたし。
これじゃ、どっちが生徒かわかったもんじゃない。
「でさ、2人で祥司たたき起こして事情を聞いたら、やっぱり丸2日研究室に監禁されてたんだってさ。
邪念は払い去れって、ケータイは発表者に選ばれてる先輩に取り上げられてたそうだ」
なんかコワッ!
大学ってそんなに大変なとこなの……?
「言っとくけど、学会の準備を学生にさせるのは、ごく一部の学部だけだから」
あたしの気持ちをまた読み取ったのか、そう言って耀太は優しい微笑みをあたしに向けた。
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