でも若宮先生にしたら、藁にもすがる思いだったんだろう。
「まあ、祥司の気持ちがまったくわからないわけじゃない。院に残る理由ぐらいは、俺にもなんとなくわかるけど……
だいたい、若宮先生は心配し過ぎなんだよな。
院に残ったのは結婚話をされるのが嫌だったからじゃないか、とか。
男からしたら、逆なんだって。
自分の夢を叶えた上で、改めて2人の未来を考えたいっつうか……」
「へぇぇ」
「祥司もさ、なんだかんだ彼女が心配だからとか言って、たまたま勤務先が同じになった俺にスパイみたいなことさせるしよ……
あっ、今の、若宮先生には内緒な?」
「はいはい……
結局のところ、2人はラブラブなんだね?」
「そういうこと……」
「で?コンビニは?」
「ああ、そうだった……」
ったく、この脱線魔が。
頭から爪の先まで理数系の耀太は、決して話上手とは言えない。
それって教師としてどうなの?とは思うけど、授業は多分、家でシュミレーション的なことをしてるんだと思う。
なかなかこう見えて、努力家なんだよね。
って、おおっとぉ、あたしまで脱線するとこだった。
再び耀太の方へ耳を傾けると、なにをどう話そうか、悩んでる風で。
「あったことを、そのまま聞かせてよ」
あたしはまるでカウンセラーのような気持ちになりながら、話を促した。
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