石橋家は、おばさんを筆頭に大の甘い物好き。
だから自分がお菓子を作った時は必ずといっていいほど、石橋家におすそ分けしていた。
それはおばさん達がアメリカに旅立った後も変わらずで。
逆に耀太の一人暮らしの様子をのぞき見たい一心で、お菓子を作っては、わざと耀太のアパートに持って行っていた。
その時、若宮先生に会ってるってことだよね?
うぅ〜ん、はて、耀太の家に女の人が上がり込んでるのを見たことあったっけ?
「あたしも……よく覚えてないや」
「だろうな?
俺も言われて思い出したけど、あの時、お前すぐ帰ったもん。
しかもなぜか祥司の顔見て逃げるようにな。
ククッ、あの時の祥司のショックの受けようったら…」
「ちょっと待って。
なんか思い出したかも。
その倉田さんって、もしかしてシルバーフレームの眼鏡かけてる?」
「ああ、かけてるな……」
「じゃああの時だ。
その時ちょうど、あたし虫歯で歯医者にかかってて、その歯医者の先生に似た人が耀太の家に居たから、ビックリして逃げたんだよ。
そうか、そうか、あの時かぁ…」
その歯医者の先生はめっぽう怖い人で。
あたしはとことん苦手だった。
部屋には他にも誰か居たのはわかってたんだけど、会釈だけして慌てて逃げ帰ったから、相手が女かどうかもわかんなかった記憶が………
そうか、あれが若宮先生だったんだ。
フムフム、納得。
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