カンタが居るだけで、あたし達の間にはとても穏やかな空気が流れていた。





ドッグセラピーってよく聞くけど、ホント、効果ありだと思う。
口のゴムパッキンみたいなのがグッと持ち上がってるのを見ると、笑っているようにしか見えないカンタ。
その笑顔(?)がなんとも癒される〜って感じ。





たらふくお弁当(もちろん犬用)を食べたカンタは、今や半分寝ぼけ状態でねそべっている。
鼻先をくすぐる草がジャーキーに見えるのか、たまにカプッとかじりついては、また違った、みたいな感じで鼻をフンと鳴らしたりして。






「くくくっ……、カンタが居るっていいね……」



「そうだな……、なんていうか、ほっこりするな?」



「………うん…」





とうとう、うつらうつらしだしたカンタの体をそっと撫でてやると、うっとりと目を閉じてあたしの方に体を預けてくる。






「おばさん達、まだこっちに帰ってくる予定はないの?」





こちらも目を閉じて芝生の上に転がってる耀太に、少しだけ期待を込めて尋ねた。
もしおばさん達が帰国したら、きっとカンタも戻ってくるはずだから。





「ない、みたいだな。俺がアパート引き払って家に戻れば、カンタも呼び戻せるんだけど……」






申し訳なさそうにごめんな、と呟いた耀太に、胸の奥がギュッと苦しくなる。




「いいよ、無理しなくて。
おばさん達が帰ってくるまで待つからさ」



「んじゃ、またカンタと楓と俺で、どっか行くか…?
俺の運動不足も解消できるかもしんねぇし」



「うんっ!行く!」



「ただし、テストの結果次第だけどな……」





喜びいさんで答えたあたしに、そう言ってニヤリと笑った耀太は、またゆっくり目を閉じていく。





意地悪なんだけど、優しい
あたしを言葉ひとつで一喜一憂させる人。




そんなアナタの寝顔をこうして間近に眺める権利が、あたしには一体いつまであるんだろう………?





『また』って言葉が、嬉しくもあり、切なくもあった。








´