結局それからもカンタの思い出に浸りたくて、あたしは本棚からアルバムまで引っ張り出した。





これぞまさしく、現実逃避なんだろうけど。






アルバムには、カンタとあたしが写っている。たまに入ってくる耀太の写真は、なるべく見ないようにした。





夕方の散歩はあたしがしてたんだけど、早朝の散歩はだいたい耀太がしていたこともあって、カンタは、耀太にもよく懐いてたんだ。
あっ、あとエサをくれるおばさんにもね。






カンタとの別れが決まったあと、あたしはそれまで以上にカンタと遊んだ。





それこそ、当時付き合っていた笠井君からの『せっかく受験が終わったんだから遊ぼう』という誘いを全て断って。





そう考えると、あたしもかなり彼氏に冷たい女だったのかもしれない。






でも、その時は1分でも1秒でもカンタと一緒に居たかったんだもん。





そしてそんなあたしにつられるように、大学生だった耀太も暇があれば一緒に遊んだ。






2人と1匹で、近くの川原によくボールを持って出掛けたっけ。





長男の賢にぃは、すでにその頃は社会人になって県外に居たから、あたしとカンタと耀太が代わりに3兄弟みたいになってた。






あの時は楽しかったなぁ……




って、ダメダメ。
耀太のことは今は考えないようにしなきゃ。





じわりと浮いてきた涙をごしごし拭っていると、ふいにノックが鳴った。






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