そうよ、だからセンスがいい楓ちゃんが名前を付けてあげて、と言われ、あたしは必死になって考えた。






賢太と耀太の弟……






車の窓から、次々と変わる景色を眺めていて、ふと目についた貼り紙の文字。





“本日完売!”





そうだ!





『カンタがいいっ!
おばさん、カンタは?ダメ?』






なんとも浅はかな思いつきだったのに、おばさんは快く了解してくれた。
しかも、やっぱりセンスいいわね、って褒めてくれた。





こうしてカンタは、石橋家の三男になった。






食いしん坊と言われるだけあって、その日におばさんと買った大量の犬用缶詰は、1週間と持たずカンタの胃袋に収まった。








ホント、食い意地張ってる奴だったよなぁ……




今もいっぱいご飯食べてるかなぁ……






おばさん達がアメリカに旅立つと知った時、ウチで引き取るとあたしは言い張ったけど、それは叶わなかった。



父親が、好きなんだけど極度の動物アレルギー体質で。





結局カンタは、耀太の叔母さん家に引き取られていった。





あの時も、あたしはこのベッドで泣きまくってたっけ……?






そんなことを思い出していたら、止まっていたはずの涙がまた溢れてきてしまって、慌てて涙を拭った。





これ以上泣くと、明日学校に行けない顔になりそうだもんね。






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