ひとしきり泣いて、ケータイの画面を見てこういう時に癒し系のカンタが居てくれたらなぁ、と思ってしまった。





カンタは、あたしによく懐いていた。
いや、逆かも。
あたしが懐いていた…?






カンタが石橋家にやってきたのは、耀太が大学受験を控えたよく晴れた11月のことだった。






夜までお友達の家に遊びに行くと言っていたおばさんが、昼過ぎにいきなりウチに訪ねてくるなり、



『楓ちゃん、ペットショップ行きましょ』



と、いきなりあたしを連れ出した。





わけが分からず車の後部座席に押し込まれて、隣に何やら段ボールが載っているのに気がついた。





『お友達がね、ぜひ引き取ってって言うから、貰ってきたの。
楓ちゃん、名前決めてくれない?』






名前………?





首をかしげながらも恐る恐る中を覗くと……






可愛い〜〜〜!!!






中に居たのは、まるで茶色のぬいぐるみ。






『お友達に、ウチの息子は顔を合わせれば“メシ”しか言わないって言ったらね、じゃあ、“ワン”しか言わないけど、ご飯をあげると全身で喜んでくれる三男坊はいらない?って言われちゃって。2ヶ月前に生まれた子犬の中から1匹譲り受けたの。
兄弟の中で、その子が1番食いしん坊らしいわ』




運転席に座ったおばさんは、そう言ってふふっと笑った。





確かにぬいぐるみ(?)は、段ボールの中でヨダレを垂らして寝ている。







『じゃあ、この子は賢にぃと耀ちゃんの弟になるの?』






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