偶然、偶然………
けど、何度言い聞かせても膨らむ不安。
しばらくすると、アパートの方からぼそぼそと人の話し声が聞こえてきて、あたしは恐る恐る覗いた。
さっきこちらに向かって来てた車は、帰宅した耀太だったらしい。
見慣れた黒い車を挟んで、若い男女が何やら話しているのが見える。
もちろん、男の方は耀太。
そして女の方は………
車から降りた若宮先生。
もうここまでくると、決して偶然だとは言い切れない。
きっと、若宮先生は耀太の帰りをここで待ってたんだ。
学校には届けてないこのアパートで。
それが意味するものは……
“2人は付き合っている”
もうこれしか浮かばない。
不思議とこの状況を冷静に分析しながら、2人を見つめ続けているあたし。
やがて、耀太と若宮先生は、一緒に耀太の部屋へと消えた。
唯一気になったのは、若宮先生が泣いていたように見えたこと。
でもあたしには、その理由を問い詰める権利はない。
2人にとってあたしは、ただの生徒でしかないのだから………
`

