そんなことを考えてたら、あっという間に耀太のアパートの屋根が見えてきた。
あたしは、いつもは歩いて来る道を、今日だけは自転車で来ている。
だって、最悪の返事を聞いた場合、送ってもらうのがイヤだから。
一人でゆっくり考えて、明日には普通の生徒として接したいから。
そのための、保険かな……
駐車場を見ると、まだ耀太の黒い車はない。
しかたなく、自転車に跨がったまま駐車場の端で待とうとペダルに力を入れた時、道路脇にハザードを焚いて停まっている赤い軽自動車が視界に入った。
…………えっ…
車内灯が、ほのかにその車中の人物を照らしている。
まさか……若宮…先生……?
携帯を見ているのか俯いていて、その顔はよく見えないけれど。
緩くウェーブのかかったその髪型に、確かに見覚えがあった。
やがて後方から走ってきた車のライトに気づいて、その顔がゆっくり上がっていく……-−−
な…んで………?
間違いなくその人は
若宮先生本人だった……
あたしはとっさに曲がり角へと身を隠した。
ここに居るのは偶然なんだと自分に言い聞かせながら。
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