玄関に座り、お弁当を胸に抱えて、携帯の画面を何度も確認する。
………まだ、か…
その度に、待受画面に表れるカンタの寝顔にほっこりしつつ、あたしは不安のため息を漏らしてうなだれた。
カンタというのは、石橋家に飼われていた犬の名前。
血統書付きのマメ芝で、とても人懐っこい犬だった。
でも今は、耀太のアパートでは飼えないので、おばさんの妹に当たる人の所へ里子に出されている。
ついでに言うと、実は耀太の住民票もそこになっている。
それというのも、アパートに引っ越しても届けなかった耀太の住所は、実家、つまりウチと2番違いの住所のままで。
就職する際、それは何かと学校側に勘繰られる原因になるかもしれないからと、いっそ全く別の場所にしようと、耀太が計らった結果だった。
だから、学校に届けられてるデータ上では、あたしと耀太はご近所さんじゃない。
さすが切れ者というか、なんというか……
こちらも負けず劣らず、ちゃっかりしている。
そしてその耀太は、必ず残業になると、あたしと母親にメールをくれる。
遅くなるのに、ご飯を用意してもらうのは気の毒だから、という耀太なりの配慮なんだろうけど。
あたしはそれを受けて、予備校のない日は夕飯の余り物に1、2品付けたお弁当を作る。
あたしが予備校の日は、母親が代わりに作る。
それから、残業中の耀太宛てに、“弁当あり”のメールを送信する。
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