6月も終わりに近づいた頃、学校中がある噂で持ち切りになった。






“ようちゃんと若宮先生が、同棲しているらしい”






ちょうどそれは、あたしが特別な存在には変わりないんだから“母親変わり”でもいいや、とある意味開き直った時と重なった。





“付き合ってる”を飛び越えて、いきなり“同棲”!?
なんで?
そんなの嘘に決まってるのに!
なんでそんな話に……






愕然とするあたしを見て、探偵よろしく瑞穂がその噂の根源を調べてくれた。






10数人目でやっと行き着いたよ……、と前置きを入れて話し出した瑞穂は、少々疲れているようにも見える。





最近瑞穂は、耀太の突撃家庭訪問のおかげで、やっと親との折り合いがついて、あたしが志望してる短大の英文科を目指しながら、ボイストレーニングにも通わせてもらえることになった。





週3回の予備校と、週1回のボイストレーニング通い。





多忙な日々を送りながら、それでも瑞穂は『ようちゃんが親を説得してくれたおかげで、元気になった』と、嬉しそうに笑った。






その瑞穂が今はげんなりした顔で、あたしの前に立っている。





真相を突き詰める勇気のないあたしの代わりに、ずいぶん頑張ってくれたのが伝わって、すごく申し訳ない気持ちになった。






「どうやら、2つの目撃情報が元らしいよ……」






放課後の静かな教室に、瑞穂の呟きだけがあたしの耳に届いた。







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