バタバタバタ…-−−





一気に中庭を突っ切って、その勢いのまま体をターンさせた。
そのせいではらりと翻がえったスカートを気にする余裕は、今はない。



目前に迫った3年5組とプレートが掲げられた教室にあたしが体をねじ込ませた途端、まるで待ち構えていたように、チャイムが鳴った。






「ハァハァ……、間に合った〜…」






今日も朝からぎりぎりセーフのあたし。
浮き上がった前髪を手ぐしで整えつつ、窓際の自分の机にドサッと荷物を置く。






「おそよう」





「はい、おそようございます」






いつもの挨拶をくれた瑞穂に、ぺこりと頭を下げたところで、やっとひと息ついた。




毎度毎度のことながら、朝からのダッシュは結構足腰にくる。
軽くストレッチで体をほぐしていると、背後からおもむろにハァと深いため息が聞こえて、あたしはそっと体をひねった。






もちろんその犯人は瑞穂なんだけど……




後ろの瑞穂は、なんだか今日も浮かない表情をしている。
傷こそ増えてないみたいだけど、連日連夜の親との喧嘩で、その顔は疲れ切ってる印象を受けた。






あたしは担任の耀太が来てないのをいいことに、今度は椅子ごと後ろを向いて、昨日耀太から聞いた話を思い出しながら、気になっていたことを瑞穂に尋ねた。






「ねぇ、瑞穂。進路のプリントには正直に書かないの?
“歌手になりたい”って」





虚ろな表情で外を見ていた瑞穂の手が、びくっと反応したのを見て、なんとなくだけど、このあと返ってくる答えがわかってしまった気がした。





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