もちろん、家から遠くない大学ってのを、“真剣に”悩んで書いたもんね。





「あのさ……、ここで言うのもなんだけど、あの大学、ウチの学校でもほんのひと握りの人間しか受かんねぇようなとこなんだけど……
知ってたか?」






げっ!?マジ??
あんまり有名なとこじゃないから、人気がないんだとばっかり……





浅はか過ぎる自分の知識にたじたじになっていると、耀太はさも残念な奴を見るような顔で頭(かぶり)を振った。





「その様子だと、家から近いってだけで選んだだろ?」






「………う゛っ…」






鋭い。






「まだ提出期間までに時間があるから、もう一度ちゃんと考えて出せ」






そう言うと、耀太はポケットから1枚の紙切れを引っ張り出した。





なんとまあ、用意のいいこと!
一度自宅に戻ったくせに、ちゃんと持って来てるんだから。






「わかった……」






あたしがうなだれながらそれを受け取ろうと手を出した時、いきなり横からぬっと現れた手が、カラスのごとくそれを奪っていった。





「ちょっと楓、アンタ、まだ進路決まってないの?」






もちろんその正体は、さっきまで笑い転げてた母親の右手で。





放任主義だと思っていたのに、いやに神妙な顔で覗き込まれて、あたしはまたもやドアにじりじりと追い詰められていく。






な、なんか……
白本母と同じ香りが、プンプンするんですけど!?







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