「ねぇ、もう進路希望のプリント提出した?」






お昼休み、ご飯を食べてまったりしているところで、朝からどこか虚ろな表情をしている瑞穂が口を開いた。




本人は言わないけど、多分、昨日も将来のことで親と揉めたんだろう。
その証拠に、左手に軽く引っ掻きキズを作っている。
話によると、白本母娘の喧嘩はいつも、かなり壮絶らしいから。






「まぁ、一応…」






「楓は進学希望だっけ?」






「うん、一応…」






「なによ、さっきから『一応、一応』って。
ちゃんと考えて決めたんでしょう?」






「ははっ、それなりにね」






真剣に将来を夢見て努力してる瑞穂を見てると、中途半端な気持ちで進学を決めたことが申し訳なく感じて、あたしは曖昧に笑った。





「……あ〜あ…、あたしの予定じゃ、今頃はオーディションに受かってデビューへの階段をまっしぐらに駆け上がってるはずだったのになぁ……
現実は厳しいよ……」






「まあ、まあ……、まだはっきり進路を決めなくてもいいんだから。
ここに居る大半の人が悩んでるんだしさ。
あたしだって、なんとなくって感じだもん」







就職するにはまだ自分が子供染みてるって思うから、進学に決めただけだし。
選んだ大学だって、家からそんなに離れてないからってのが理由だし。
明確な目的を持って決めたものじゃない。






17かそこらで、いきなり『将来はどうします?』って言われても、正直困る。





「あたしからしたら、瑞穂みたいに、追い掛ける夢がある人がすんごい羨ましいよ」







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