「遊園地ですか??」

「うん、これ」


彼は掲示板に貼ってある後楽園の広告を指指した。

そう言えばあたしも東京に来て以来、遊園地には行ったことがない。


あたしたちは来た電車に乗り込んだ。


気のせいかもしれないけど、西園寺が帽子を目深に被りなおしたように見えた。

その時、


「…!?」


ドアの側に立ったあたしの肩を彼の腕がそっと包んだ。

「あああの…」

「一回、こういう恋人っぽいことしてみたかったんだよね」

「恋人…」


恋愛経験の浅いあたしには荷が重くて、心臓は今にも破裂寸前だった。


「日本の遊園地に行くのも初めてだし」

「イギリスの遊園地はどんな感じなんですか??」

「今度連れてってあげるよ」

「い、いいですよ!!そんな」


会話をしつつ、あたしはいつ西園寺が週刊誌の話を切り出して来るのか、気が気でならなかった。


しかし結局その事には触れないで、遊園地がある最寄りの駅に着いた。


(あたしから言ってもいいのかな…)


駅の改札口には後楽園で遊び終わったであろうたくさんの人でごった返していた。


(人多いなー)


するとあたしと西園寺の間に後ろの人が割込み、姿が見えなくなりそうになる。


(あ、待って)


咄嗟に西園寺の手首を掴んだ。


「??」


振り返った驚いた顔に自分が何をしたか一瞬で悟った。


「あ、ごめんなさい!!」


パッと手を離す。


「なんで離すの??」


彼はそう言い、あたしの右腕に左腕を絡ませ貝殻繋ぎをした。





「離れんなよ」