今考えても、あたしがこんなところで、こんな人と、こんなことをしているのはおかしい。

半年前の自分だったら想像も出来ないだろうだろう。



―半年前―


あたしはある居酒屋にいた。


「では!無事みんなで卒業出来たことを祝って…」


「「「かんぱーーい!」」」

その日はあたしの大学の卒業式だった。


「野山」

後ろから声を呼ばれて振り返る。

「あ、神山君」

同じ学部だった神山君がビール片手に立っていた。

「今日一回も会ってなかったからさ」

「そうだね、ぁ、卒業おめでとうございます」

「いえいえ、そちらこそ」

「……」

「……」

無言になってしまう。

「あ、いや、そのさ!お礼言いたくて!!」

「あ、え、おおお礼?」

「うん」

「え、おお礼なんてそんな、神山君にお礼されることなんてあたし、何も…」

あたしは目の前で、大きく手を振って見せた。

「だってそのー、さっ、一年間普通に接してくれたじゃん?」

「え…ああ、もちろんだよ!だって、友達じゃん!」

精一杯笑った。

でももしかしたら、その笑顔はひきつっていたかもしれない。